最近無性に多肉植物を育ててみたくなり、ネット上や書籍の情報を読み漁ってます。
水草は長年育成してるので詳しいのですが、多肉植物は未知の世界。新しい知識の連続でとても刺激的です。
とりあえず人気のアガベや塊根植物(コーデックス)の代表格であるパキポディウムを育ててみようとすると、実はとんでもないお値段がするということがわかりました。
確かにそこまで育つのに何年もかかりますからね。わかります。僕も多肉植物については勉強しましたから。でも、その価値がわかったところで高いものは高いです。
そんなときに見つけたのが実生という種から育てるという方法。種を買えばいいので圧倒的にコストは低いです。一方でデメリットもあるのも事実。多肉植物の実生のメリットデメリットについてはこんな感じ。
・値段が安い
・子株が育っていく楽しさがある
・省スペースでたくさん育成できる
・全て発芽するわけではない
・成長した株に比べ弱い
・見応えのある株になるまで何年もかかる
育てるのに何年もかかるというデメリットはありますが、そもそも子株が育っていくのも楽しめると思ったので、初めてですがいきなり実生から始めてみようと決めました。
熱帯魚の世界でも、ディープな世界としてアピストグラマという種類の魚がいるのですが、なんとなく多肉植物の実生育成はこれに近いものがあると思いました。育ったものは数万円と高価な点や、じっくり育成することで見違えるように美しい個体に育つ点。ちゃんと育てることで子が採れる点など色々と共通点が多く、アピスト好きは多肉好きになる素質があるのではと勝手に思っています。
アピスト大好きな僕も、多肉植物、特に塊根植物と呼ばれるコーデックスに関する記事をみた瞬間に何かビビッと感じるものがあり、まだ始めていないにも関わらず一生の趣味になる予感がしています。笑
検索してるとおススメで上がってきやすくなるせいか、とても人気な趣味のような気がしてたのですが、種から育てる実生となるとまだまだ情報が不足してて何が正しいのかわかりません。
そこで、少しでも実生を楽しむ方の参考になればと思い、僕の事例も書くことにしました。
職業柄、検証しながら進めていくのは慣れていますので、少しでも参考になれば嬉しいです。
ちなみに種をまいたのは9月中旬。夏が過ぎ、暑い日もありますが基本的には25度くらいの室温で植物にとっても快適な時期だと思います。
必要品の準備
実生から育てるには種や種の発芽促進や殺菌の準備、腰水育成用の資材、土や鉢の準備が必要になります。どれもそんなに高額なものはありませんので、準備していきましよう。
まずは種を購入
種は蒔けば全部発芽するわけではなく、発芽率は種の状態や種類に左右されるようです。
可能な限り採れたての新鮮な種が良いようなので、自分で採った種なんかは新鮮さという意味ではナンバーワン。
自分で育てた植物から種を採って、そこからまた実生を育ててというサイクル、最高ですね。憧れます。まずはそこ目指していきたいです。
今回は信頼できる購入先として1番おすすめされているseedstockさんで購入。
今回挑戦するのはこの6種類。
・アガベ オテロイ Agave oteroi
・アガベ 笹の雪 Agave victoriae-reginae ssp. victoriae-reginae
・パキポディウム カクチペス Pachypodium rosulatum ssp. cactipes
・パキポディウム ロスラーツム Pachypodium rosulatum subsp. rosulatum
・フォークイエリア コルムナリス Fouquieria columnaris
・ドラセナ ドラコ Dracaena draco subsp. draco
このうちドラセナ ドラコはモニター品としてサービスで入れていただきました。こういうのいいですね。自分では選ばなかったと思うので、新たな発見がありそうで楽しいサービスです。
グラキリスなどの人気の種類は売り切れていることもありますので、その場合は随時入荷チェックするようにしましょう。ただ、目的の種が売り切れてても、取り扱っている種類もそこそこありますので、他の育てたい種類も見つかりやすいと思います。
資材の準備
実生をするための資材も準備します。
まずは土。自分で簡単に配合できるようですが、初めてなので最初から混ざっているものを使います。プロトリーフがコスパ良く評判も良いのでこちらを使用します。
表面に保水性の高いバーミキュライトを使うと良いようなのでこちらも準備します。
鉢は定番のプレステラと通気性の良さそうなマジカルポットを購入。
土を入れる際はこのような道具があると入れやすいし、細かく調整もしやすいのでおすすめです。植物やるなら今後もずっと使いますので持っておきましょう。
カビが生えやすいため、殺菌剤のベンレートを使います。
芽が出やすいように発芽の促進剤を使用。コスパの良い定番品ですね。
乾燥を避けるために腰水で発芽させるので何らかの容器が必要。密閉したかったので100均でケースを調達。
種はこちらのプラカップで6-24時間くらい浸します。
種が細かいので先の細いピンセットもあると便利です。直接手で持たなくて済むのでより無菌的に作業できます。
通気性の確保と土の流出を防ぐのに軽石が役立ちます。今回僕は使いませんでしたがあった方がベター。
以上で必要なものの準備は完了。
実際に種をまこう
種の殺菌・発芽促進
まずは種を殺菌剤であるベンレートと、発芽促進剤のメネデール溶液に浸します。ベンレートは約2000倍、メネデールは約100倍に希釈します。ここはざっくりで大丈夫だと思います。
種は沈まないものもありますが気にしなくて大丈夫みたいです。
土の準備
殺菌剤に浸し終わったら次は土の準備です。
軽石を準備した人はそこに少し敷いて、その上にプロトリーフを入れます。表面に薄くバーミキュライトを敷けばオッケー。
土の中の雑菌も殺菌したいので沸騰したお湯をかけます。そのあと微塵を除くために上から水をかけて流してあげます。
これで種まきの準備完了。
腰水用の水は種の殺菌に使用した溶液を使います。
少しでもカビの発生が抑えられることを願って。
いよいよ種まき
種には好光性といって発芽の際に光が当たってた方が良いものと嫌光性という光が不要なものがあります。パキポディウムやアガベは光が当たっているほうが良いようなので、土の上に置くだけで大丈夫です。
今回は実験として完全密閉とラップで軽くふたをする2パターンを試してみます。
それぞれ6~7個ずつ種をまいて、うまくいく確率を比較してみましょう。
室内環境は水草用のLEDライト。照度は4000lmくらい。室温25℃、湿度50%くらいで一定です。おそらく密閉は湿度100%、ラップは70%くらいでしょう。
経過観察
2日経過
開始二日は密閉もラップもそのまま放置します。
密閉の方は一部芽が出ました。さらに、カビが発生した種も1つもありません。
一方でラップで蓋をした方はまだ何も芽は出ていないうえに、2個カビが生えています。
ここまでは密閉の方が成績が良いです。
3日経過
腰水は2日目からは毎日交換、霧吹きも毎日行います。
まずは密閉の方を確認。また少し芽が出ている種が増えました。
ただ、2日目までこちらはカビが全く生えていませんでしたが、一度開けたせいか1つ種にカビが発生しました。
一方でラップの方は更にカビが生えているものが増えました。
カビの発生数、芽の出方、どちらも密閉の方が成績良好です。
1点ラップが良い点としては、アガベに関してはラップの方が発芽率が良いです。偶然でしょうか。
モニター種は全く反応ないので、それぞれ5個のうち2つを土に埋めてみる。
5日経過
5日目になると次々と発芽してきました。特にアガベは発芽率が高く、順調です。
特にラップの方はアガベの発芽がいいです。アガベに関しては湿度高過ぎない方が良いのかもしれません。
心配なのはパキポディウム カクチペスが全く発芽しないこと。密閉もラップも両者無反応です。
フォークイエリア コルムナリスは密閉の方は少し発芽しましたが、ラップの方は全滅かもしれません。
少し様子を見ますが、こちらは密閉の方が適しているのかも。
7日経過
密閉やラップ終了。ここからは蓋はせず、開放した状態で腰水管理を継続します。
カクチペスは結局1つも発芽せず。密閉やめてから発芽が進むケースもあるようなので、そこに期待。実は一つぽろっと腰水の中にパキポディウムの芽を落としてしまって、これがロスラーツムなのかカクチペスなのかわからなくなってしまいました。
一応カクチペスとして育てる予定ですが、彼は一体何者に育つのでしょうか。。。
まとめ
初めての実生挑戦でしたが、前評判通りアガベはほぼ全部発芽しました。発芽の成功率という意味では初心者向きですね。
パキポディウムはカビやすく発芽率も低め。特に密閉ではなくラップで少し隙間がある方法では発芽率がより低い傾向がありました。
また、密閉の方が意外にもカビが生えにくかったので、次回は密閉を中心にやってみようかなと思います。全然無菌ではないですが、一応無菌的に操作したので密閉の方がそれが保たれやすいのかもしれないです。
ただ、今回の検証は少し種の数も少ないので、この検証だけで結論は到底出せないという印象です。
今後も引き続き色々なパターンを試してみて、検証の回数を増やしてより正確な結論が出せればと思ってます。
今回発芽した植物がどのような経過を辿るかも観察を続けようと思います。
これから実生に挑戦する方にとって少しでも参考になれば嬉しいです。